変わる応接間

 かつて、家の設計では、応接間の主役は和室でした。2間続きの和室に縁側、それも広縁がセットされていることが理想でした。

 この2間は一般的に6畳の2間続きでしたが、8畳が理想で、御大尽ともなれば10畳2間、加えて天井は折上げの格天井となって豪華さがランクアップするストーリーでした。

 椅子に座る生活が一般的となり、食卓のちゃぶ台、こたつ等がなくなり、食卓テーブルに椅子が当り前となると広い面積を必要とする和室の2間続きが一間に変わり、この和室に床の間、仏壇、神棚等でワンセットになりました。無くなった和室の一部屋が洋室の応接間となり、6畳が8畳、10畳と拡大し、ついにはリビングと呼ばれるようになりました。一時流行した応接セット3人掛けの長いソファーに、一人掛けで両肘置きのソファー2セットを置いた部屋がリビングのイメージで、マントルピースなどと言われる暖炉スペースで石油ストーブなどが活躍していた時代がほんの15年程前までありました。

 家族が集まる食事時にはコミニーケション上、家族の大切な場所として、キッチンは住宅の設計上も大きなウエイトを占めるようになります。

 システムキッチンは豪華さや、使い勝手を競い、レンジフードなども自動洗浄の機能を有するものまで登場しました。

 気が付けばキッチンは主役に近い扱いとなり予算も多く割り当てられることとなり、時には応接のスペースとしても活躍する場所に格上げされるようになります。

 従来のリビングとの一体的な利用が想定されるキッチンが一般的なこの頃となっています。

 リビングに人を招いて、人と交わるオープンな人間関係ではなく、玄関の施錠や、セコム等への加入利用など、ご近所の人を気軽に家に入れない時代となりました。

 ご近所との交流も、かっての縁側に変わり、「アウトドア・リビング」などと言われる庭先でベンチで応接するスタイルが今日的な応接間となるのでしょう。