おもてなしは薪風呂にこそあれ
冬の夕刻、生憎の雨となった、
待つ程に来客あり。
「先ずは、一風呂いかがですが」
風呂は母屋から廊下で突き出た場所にある。
客はすすめられるまま湯屋に入り身を清めると、湯に浸かる。
格子から洩れ来る満月の明かりに湯気が揺らいでいる。
と、遠くから近づく下駄の音。
傘紙(からかさがみ)を打つ雨音は湯屋の前で止まったようだ。
「湯かげんは如何ですか」
「やぁ、いい按配です」
「一本焼(く)べておきますね」
薪を焼(く)べる音がして、亭主の立ち去る下駄の音が遠のいてゆく。
そうして焼(く)べられた一本の薪は燃え上がり、亭主のおもてなしの心使いと供に心地良い温もりは客を包み込む。
寒い冬の夕辺には薪風呂の温もりは何よりのおもてなしだったものです。
今やボタン一つ。
「お湯が沸きました」
進化系の給湯器だと
「湯かげん如何ですか」
「少しだけ追いだきしましょうか」
と、なるかも!
うるさい、ゆっくり入りたいんだぁ😠!!!